-なるほど二百年近くも相成り、しかもこの国の厚恩を受けてかように暮らしております上はなんの不足があるはずもございませぬが、ひとの心というものは不思議のものにて候。
故郷のことはうちわすれられず、折りにふれては夢のなかなどにも出 (いで) 、昼間、窯場にいてもふとふるさと床しきように想い出されて、
いまも帰国のこと許し給うほどならば、厚恩を忘れたるにはあらず候えども、帰国致したき心地に候-
司馬遼太郎 『故郷忘じがたく候』
-なるほど二百年近くも相成り、しかもこの国の厚恩を受けてかように暮らしております上はなんの不足があるはずもございませぬが、ひとの心というものは不思議のものにて候。
故郷のことはうちわすれられず、折りにふれては夢のなかなどにも出 (いで) 、昼間、窯場にいてもふとふるさと床しきように想い出されて、
いまも帰国のこと許し給うほどならば、厚恩を忘れたるにはあらず候えども、帰国致したき心地に候-
司馬遼太郎 『故郷忘じがたく候』
-こんなにのんきで苦しくないのは
魂魄なかばからだをはなれたのですかな
たゞどうも血のために
それを云へないがひどいです
あなたの方からみたらずゐぶんさんたんたるけしきでせうが
わたくしから見えるのは
やっぱりきれいな青ぞらと
すきとほった風ばかりです-
宮沢賢治 『眼にて云ふ』
最期の瞬間にそういう心持ちになれるかどうか、今の僕にはわからないけれど、そのような自分でいられたらいいなとは思う。