Lectio

コンパスローズ

-地中海では、十三世紀になって航海にコンパスが用いられるようになった。

青い海を渡って都市と都市を行き来する船を、長年にわたって小さなコンパスが導いてきたのだと思うと感慨深い。

私たちの祖先は、地球の内部から発せられる力を頼りに針路を決めてきたのである。

渡り鳥も地球の磁力を感知する。

鳥と人間は別々の進化をたどって、地球からの思いもかけない贈りものに-孤独な旅人を導く見えない力に気づいた。

そんな力があるとは気づかないまま終わることも充分ありえただろうに-

マーク・ヴァンホーナッカー 『グッド・フライト、グッド・ナイト』

Lectio

ようするに あなたが ひつようとしているのは、時間だ。そうでしょう?

-いいですか、フージーさん。

あなたは はさみと、おしゃべりと、せっけんのあわとに、あなたの人生を浪費しておいでだ。

死んでしまえば、まるであなたなんか もともといなかったとでもいうように、みんなにわすれられてしまう。

もしも ちゃんとしたくらしをする時間のゆとりがあったら、いまとはぜんぜんちがう人間になっていたでしょうにね-

ミヒャエル・エンデ 『モモ』

僕の人生にとって何が浪費で何が大切なものかについて、このところ考えることが多くなっている。

すべてが無駄なことのような気もするし、すべてが宝物のような時間である気もする。

例えば「あなたの人生もう一回やり直してきて下さい」と言われて、一から色々な選択を迫られたとして、やっぱりまたここに辿り着くような気もしている。