デジタルの世界では要件みたいなものがちゃんと設定されていて、AとBが満たされたらCねってことになるけれど、現実の世界はそうじゃないって僕は思っている。
小学生の頃、習いごとの夏合宿の参加要件は「4年生以上」となっていて、当時2年生だった僕は合宿には参加できないと先生から聞かされた。
僕は全然そのことが納得できなくて、家に帰ってまだスーツを着たままの父に向かって猛烈な勢いで話をした。涙が出てきたけど構わなかった。
父は何も言わずにその場で先生に電話をしてくれた。
まず第一に嬉しかったのは、父が僕の気持ちをわかってくれたこと。
それから先生が規則を破ってまで僕の参加を認めてくれたこと。合宿所でも上級生が僕を受け入れてくれたこと。
別に合宿なんて大したことじゃないんだよ、あと2年待てばいいだけじゃないかと、誰も言わなかったこと。
考えてみれば、新卒で入った会社が当初掲げてた要件だって僕はちっとも満たしていなかったし、大学も似たようなものだった。
この世界はそういうことばかりで、だから苦しくて、楽しい。