-ゆるい坂を おりてゆけば
夏色の風に あえるかしら
おそい午後を 行き交うひと
夏色の夢を はこぶかしら
夕陽のなか 呼んでみたら
やさしいあなたに 逢えるかしら-

生まれ育った地を離れ、初めて移り住んだ街を見た父が「世の中にはこんなに平坦な土地があるんだ」と思ったという話を小さな頃に聞かされて、それから長い間印象に残っていた。
その言葉の意味がわかったのはずっと後になってからだけど、
若い頃の父が立った坂の向こうには何が見えたのだろう。
-ゆるい坂を おりてゆけば
夏色の風に あえるかしら
おそい午後を 行き交うひと
夏色の夢を はこぶかしら
夕陽のなか 呼んでみたら
やさしいあなたに 逢えるかしら-
生まれ育った地を離れ、初めて移り住んだ街を見た父が「世の中にはこんなに平坦な土地があるんだ」と思ったという話を小さな頃に聞かされて、それから長い間印象に残っていた。
その言葉の意味がわかったのはずっと後になってからだけど、
若い頃の父が立った坂の向こうには何が見えたのだろう。
-元来人間の智慧は未来の事まで見透すことができないから、
過去のことを書いた歴史といふものにかんがみて将来をも推測せうといふのだが、
しかるところこの肝腎の歴史が容易に信用せられないとは、実に困った次第ではないか。
見なさい、幕府が倒れてから僅かに三十年しか経たないのに、
この幕末の歴史をすら完全に伝へるものが一人もない-
勝 海舟 『氷川清話』