Musica

O Mio Babbino Caro ( 私のお父さん )

かつて校舎として使われていた施設の舞台の上で、きれいな衣装に身を包んだ女の人が歌っている。

壇上の女性が何かしら強い想いみたいなものを抱えてその曲を歌っていることは、その頃の僕にもすぐにわかった。

会が終わり、気持ちの整理をしながら館内をうろうろしていると、衣装を着替えた彼女が控え室から出てきた。

迷った末に、お礼の言葉とともに「オペラのことは良く知らないのですが、いい歌ですね」とだけ伝えた。

お姉さんは、にっこりと笑った。