IdeaLectio

本を読むこと、経済合理性について

「諸君。残りのお金で、本を買いなさい」

経済史の講義の終わりに、教授は答えた。

学生の1人が、過去の歴史を踏まえて先生なら何に投資されますかと尋ねた。

「私であれば世界経済そのもの(インデックスファンド)に幾らか投資する。あとは書物だ。別に経済学の本でなくても構わない。一冊の本を書くために、その世界の専門家が、我々がそれを読み切るための時間の50倍の時間と労力を費やしてできたものだ、という認識をあらためて持ちなさい」

「そしてこれは君たち次第でもあるが、書店に支払う対価の何倍もの価値をもたらしてくれるだろう。今日の講義は以上だ」

僕はその足で書店へ向かい、気になっていた書籍を両手に抱えて帰ったのを今でも覚えている。

大学時代から、ことある毎にこの教えを思い出してきた。

2倍、3倍の価値を感じる書籍はざらにあるし、時には人生観を変えるくらいの出会いもある。

失敗したとしても文庫なら数百円、単行本でも数千円。読むことに費やす時間もタイミングも、自分で決めることができる。

これ程リスクあたりのリターンに優れた投資先は他にない。