
- 劇場を出て、銀座で肉を買い、帰宅して、ウイスキーをのみながら焼いて食べた。
食後、ひと眠りしてからテレビをつけると阪神・巨人戦で、小林が投げている。
蒸し暑い甲子園球場で、力投をつづける小林投手。
去年の彼には、まだ見られなかった鰭 (ひれ) が、たしかに現在の彼についてきている -
池波正太郎 『炎天好日』
最後に何かに心から拍手をしたのは、いつだったかなと考えてみる。
いま僕たちに必要なのは、夢中になれる何かとか、心を託せる誰かとか、そういうものなんじゃないかなと思ったりした。
当時の阪神巨人戦でピッチャー小林と言えば、小林繁さんのことでしょうね。その当時の小林さんが巨人側だったのか阪神側だったのか、言い方を変えれば、江川事件の前だったのか後だったのかが気になる所ではありますが、書きっぷりから見て、おそらく阪神にトレードされた後のことかなーと推測しています。
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KYOさん、ありがとうございます。
ご明察のとおりです。この後、「江川事件以後の苦悩が、彼を成長させつつある」と続き、不運と苦悩が男をいかに成長させるかというテーマで書かれています。池波正太郎も作家としての自身の苦しみをそこに重ねていたみたいですね。
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