- 井荻村 (杉並区清水) へ引越して来た当時、川南の善福寺川は綺麗に澄んだ流れであった。
清冽な感じであった。知らない者は川の水を飲むかもしれなかった。
川堤は平らで田圃のなかに続く平凡な草堤だが、いつもの水量が川幅いっぱいで、
昆布のように長っぽそい水草が流れにそよぎ、金魚藻に似た藻草や、河骨 (こうほね) のような丸葉の水草なども生えていた -
井伏鱒二 『善福寺川』
- 井荻村 (杉並区清水) へ引越して来た当時、川南の善福寺川は綺麗に澄んだ流れであった。
清冽な感じであった。知らない者は川の水を飲むかもしれなかった。
川堤は平らで田圃のなかに続く平凡な草堤だが、いつもの水量が川幅いっぱいで、
昆布のように長っぽそい水草が流れにそよぎ、金魚藻に似た藻草や、河骨 (こうほね) のような丸葉の水草なども生えていた -
井伏鱒二 『善福寺川』
- 庭の日かげはまだ霜柱に閉じられて、
隣の栗の樹の梢 (こずえ) には灰色の寒い風が揺れているのに
南の沖のかなたからはもう桃色の雲がこっそり頭を出してのぞいているのであった -
寺田寅彦 『春六題』