Gastronomie

がらんどう

いつの頃からか、考えごとをするときには珈琲を淹れるようになっていた。

おかげでコーヒーの香りを愉しむのも束の間、すぐにくだらないことに頭を使う悪しき習慣がついてしまった。

「店内が暑かったから」というただそれだけのことではあるけれど、

ひさしぶりに何も考えず、自分をからっぽにして飲むコーヒーは何だか不思議な程おいしく、幸福な時間を過ごした。

Lectio

でも、ぼくにはわからない。この世の中って、せっかく本気で何かをはじめても結局、何もあとには残らないみたいだ。

「障害の飛越が危険になるのは、そのときのスピードしだいなんだ、ジョー。

ここじゃたいしたスピードは出ないし、障害だってそう性 (たち) の悪いほうじゃないからな。

厄介な問題が起こるのは、たいていスピードのせいなのさ、障害のせいじゃなくて」

アーネスト・ヘミングウェイ 『ぼくの父』