
- 安らかで静かな心は、自分の人生のすべての部分を訪ね歩くことができる。
これに対して、多忙な人間の心は、まるで「くびき」をかけられたかのように、振り返って背後を見ることができない。
そうして、彼らの人生は、深い闇の中に消えていく-
セネカ 『人生の短さについて』
記憶の在り方についてはいつも不思議に思う。
どこかを偶然通り掛かったとき、思い出の曲を聴いたとき、どこかで嗅いだことのある香水に出会ったとき、脳内のどこか奥深くに隠れていた記憶が蘇ってくることがある。
そういう時には、やはり一時的に忘れてしまっているだけで「どこかへ消え去ってしまった」わけではないのだなと安心すると同時に、
僕の行動によっては、「二度と呼び戻されることのない記憶や思い出」というものもあるのだなと、何だか不思議な気分になる。