
太宰云々の前に、まずもう唐仁原教久氏のカバー装幀からして好き。
太宰云々の前に、まずもう唐仁原教久氏のカバー装幀からして好き。
何処 (いずこ) を見ても若葉の緑は洪水のように漲り溢れて、
日の光に照されるその色の強さは、閉めた座敷の障子にまで反映するほどなので、
午後の縁先なぞに向かい合って話をする若い女の白い顔をば、色電気の中に舞う舞姫 (バレエ) のように染め出す。
どんより曇った日には緑の色は却って鮮やかに澄渡って、沈思につかれた人の神経には、軟い木の葉の緑の色からは一種云いがたい優しい音響が発するような心持をさせる事さえあった-
永井荷風 『花より雨に』
朝早く起きて、湖を見に行く。
遥か彼方へ続く海よりも、少ないながらヒトの気配のする湖に心惹かれる。