
-シナ人がこういう柱のふくらみを案出し得なかったかどうかは断言のできることでないが、
しかしこれが漢式の感じを現しているのでないことは確かなように思う。
仏教と共にギリシア建築の様式が伝来したとすれば、それが最も容易な柱にのみ応用せられたというのも理解しやすいことで、
これをギリシア美術東漸の一証と見なす人の考えには十分同感ができる。
もしシナに漢代から唐代へかけてのさまざまの建築が残っていたならば、仏教渡来によって西方の様式がいかなる影響を与えたかを明白にたどることができたであろう。
しかるにその証拠となる建築は、ただ日本に残存するのみなのである-
和辻哲郎 / 古寺巡礼 『エンタシス ギリシアの影響』