風のあまり強くない冬の晴れ間なんかに長い時間をかけて散歩していると、
ハイデルベルクを訪れた時のことを思い出す。
中央駅の近くで朝食を食べてしまうと、その日いちにち、何ひとつ予定が入っていない。
お金もないから別に土産ものを探すでもなく旧市街をただひたすら歩く。
お腹が空いたところでカリーヴルストだの、ザワークラウトだのを食べながらひと休みし、また延々と歩いた。
夕方、これだけ歩いても全然脚が痛くならないなんてとちょつと気を良くして宿へ戻ると、「君はいい靴を履いてるね」と相部屋の仲間 (イタリア人だったかな) が言ってくれた。
メーカーも、どこで買ったかすらも思い出せないようなスニーカーだったし、長いこと履いてきたせいで幾分擦り切れてはいたけれど、頑丈で、僕の足によく馴染んでいた。
そう言われてみればそうかもしれないなと思いながら、礼を言ってベッドに潜り込んだ。