
やっぱり気にはなっている

学生時代、友人と訪れたウィーンでひとりのバックパッカーと知り合った。
決して人懐っこくはない僕にとっても彼は年の離れたお兄さんみたいな雰囲気で、その夜は皆で名物のシュニッツェルを食べた。
お互いのざっくりとした旅程を確かめ合うと「僕たちはミュンヘンでまた会えるかもしれないね。そしたらまたご飯でも食べようよ」と言って、そのまま別れた。
翌朝から別々の町へ向かった僕たちは、途中の鉄道の乗り換えが上手くいかず、結局は約束の時間に間に合わなかった。
名前も連絡先も住んでる街すら知らない僕達はもう会えることはないんだなとちょっぴり寂しい気持ちになったけれど、こういうのも人生だなとも思った。
いつかどこかの街なかで、ばったり会えたら素敵だななんて密かに楽しみにしている。