-夫が死んだとき、北海道の修道院にいたしげちゃんから、だれからももらったことのないほど長い手紙がイタリアにいた私のところにとどいた。
卒業以来、彼女からもらった、はじめての手紙だった。
むかしのままのまるっこい書体で、私の試練を気づかうことばが綿々とつづられていた。
こころのこもったそのことばよりも、なによりも、私は彼女の書体がなつかしかった。
修道女になっても、まだおんなじ字を書いてる、と私は思った-
須賀 敦子 『遠い朝の本たち』
手紙もいいな、と思った。
小さい頃に、まだ元気だった祖母に宛てて書いた短い手紙のことを思い出した。下手っぴな字で、いつまでも元気でいてねと書いたその時の気持ちは今でも覚えている。