「この子には大器晩成の相があるわ」
僕がまだ赤ん坊の頃、占いをやっている友人に手相を観てもらった際にそう言われたと母から (事あるごとに) 聞かされて育った。
子どもにとって大器晩成というのはあまりにも漠とした言葉で、いつ頃どういうピークを迎えるのかとか、実はもう過ぎてたらとか、考え始めるとキリがないので、とりあえず僕は年々運勢が良くなっていく幸福な人間なんだろうと解釈することにした。
ピーターパン的な考えの周囲とは違って、早くオトナになりたいと願う子どもだった僕にとっては、歳を重ねながら少しずつ自分の世界を広げていくプロセスは、実際に悪くなかった。
良いことがあったときは (やっぱり) 運が良かった、良くないことがあったときは (運の良い自分でもこんな目に遭ったんだから) まだ努力かなにかが不足してたんだろう、でもきっと来年か再来年にはもっと良い状況になっているはず、と考えるようにしている。
結果的に、一日一日を生きる姿勢としてはそれほど間違っていなかったと思っている。