Gastronomie

「おいしそうに食べるわね」

あなたの特技を3つ教えてと言われても困ってしまうけれど、ひとつはすぐに答えられる。

「おいしそうに食べること」だ。

正確に言うと、相手に「おいしそうに食べているなと思ってもらうこと」だ。

どういう仕草をすればそうなるのか、自分ではわからないけれど、家族や友人、仕事関係でもそう言ってもらえることが多い。

お店で食べていると、隣のテーブルに座ったお客さんが不思議と僕と同じものを注文するなんてことも多い。

学生の頃、デートのときに「あなたって本当においしそうに食べるわね」と言われる度に「だって、おいしいからね」と適当に答えていた記憶があるが、実際においしいと感じていることが多いのだ。

僕は、自分がいま本当に食べたいものが何か良くわかっているし、イタリアンなんかに行っても「今日は日替わりでいいや」みたいなことは、まず無い。

お店にとっては面倒な客かもしれないけれど、自分にとって本当に美味しいと思えるものをお腹いっぱい食べるというのはとても幸せなことだ。

それで、今日もお店のカウンターには『キノコとベーコンの和風バターしょう油』のパスタが並ぶことになった。

残暑が厳しかろうと、僕は海苔とか大葉がどっさりと盛られたアツアツの和風パスタが食べたいのだ。

Lectio

レモンエロウの衝動 (しょうどう)

-変にくすぐったい気持が街の上の私をほほえませた。

丸善の棚へ黄金色に輝く恐ろしい爆弾をしかけてきた奇妙な悪漢が私で、もう十分後にはあの丸善が美術の棚を中心として大爆発をするのだったらどんなにおもしろいだろう-

檸檬 / 梶井 基次郎